「喘息の症状・発作・予防」解説集
なぜか息が苦しく、胸からヒューヒューと音がする。
これは、実は喘息の可能性がある症状です。
年々医学が進歩し、かつて不治の病と呼ばれた病気も治療できるようになる中で、近年増加傾向にある喘息の患者。
驚くことに喘息の患者は、日本国民全体で少なくとも※約800万人いると考えられているのだとか!
喘息は、発作が起きたときに的確な処置をする必要があり、さらに発作にはいくつかの種類や強弱があります。
今回は、喘息の症状、発作の種類、治療法、予防についてのお話です。
■参考参照サイト:リウマチ・アレルギー対策委員会報告書|「リウマチ対策の方向性等」及び「アレルギー疾患対策の方向性等」について |報道発表資料|厚生労働省
気管支喘息とは?
気管支(きかんし)喘息は、呼吸をする際に空気が通る「気管」が何らかの原因で炎症を起こして腫れることで、空気の通り道が狭くなり、咳や喘鳴(ぜんめい:胸から鳴るヒューヒューという音)を引き起こす疾患です。
気管支喘息は子どもに多い疾患と考えられがちですが、実際は子どもも大人もともに10%程度が発症しているので、子どもの病気という訳ではありません。
気管支喘息には、「アトピー型喘息」と原因不明の「非アトピー型喘息」があります。
小児の喘息は何らかのアレルギーが原因である「アトピー型喘息」が90%程度を占めると言われている一方、成人の気管支喘息は、アレルギーの原因を特定できない「非アトピー型喘息」が主体です。
気管支喘息の死亡数
■イラストの参考サイト:気管支喘息|アレルギー疾患対策推進協議会審議会資料 |厚生労働省
気管支喘息は、気管支が炎症することによって空気が通りにくくなるため、呼吸不全に陥るリスクがあります。
喘息による死亡者は、1950年には年間約16,000人以上いましたが、治療の進歩によってその数は減少し、2014年には年間約1,550人になりました。
このように喘息は命にかかわる病気であるため、中発作以上の発作が出た場合には、内科やかかりつけの病院を受診しましょう。
喘息の検査
ここでは、喘息かどうかを判定したり、喘息の程度を知ったりするのに必要な検査の種類についてお話します。
喘息を疑ったとき、内科やかかりつけの病院を受診される際の参考にして下さい。
喘息の検査:アレルゲン
「アトピー型の喘息」では、喘息を起こすアレルギー物質を特定するために、アレルギー検査を行ないます。
アレルギーの原因物質である「アレルゲン」の測定には「lgE抗体」の検出が必要なので、血液検査や皮膚反応試験が採用されることが多いです。
このように、アレルギーを疑われる原因物質の検査を中心に行なわれます。
喘息の検査:ピークフローの測定
もうひとつの検査方法は、「呼吸機能検査」と呼ばれるもの。
この検査では、ピークフロー値を測定して低下が見られるかどうかを確認します。
すでに喘息の症状が出ている場合は、血液ガス分析を行なったり、胸部聴診で狭窄音(きょうさくおん)がするか確認したり、あるいは胸部X線写真を撮ったりして、喘息かどうかの判断をする場合もあるようです。
気管支喘息の症状
喘息の代表的な症状は、気管支が炎症を起こして狭くなったり塞がったりしてしまうことで息がしにくくなったり、咳が出やすくなったりするというものです。
呼吸がしにくくなると、胸がヒューヒューと鳴る喘鳴や、痰(たん)のからまない空咳が持続的に出るようになります。
また、症状が重たくなると呼吸困難や過呼吸、あるいは酸欠などを伴うこともあるため、非常に注意が必要です。
「非アトピー型喘息」の場合、症状を引き起こす誘因は限定できないため、たびたび重い症状が出る場合は、日頃から様々な喘息の誘因に注意しなければなりません。
気管支喘息は、ガイドラインで重症度が定められています。
喘息の程度を知りたい方は、下記の表を参考になさって下さい。
| 重症度 | 頻度 | 強度 | 夜間症状 | ピークフロー値 | 変動 |
|---|---|---|---|---|---|
| 軽症間欠型 | 週1回未満 | 症状は軽度で軽い | 月2回未満 | 80%以上 | 20%未満 |
| 軽症持続型 | 週1回以上 週7日未満 |
月1回以上日常生活や睡眠が妨げられる | 月2回以上 | 80%以上 | 20~30% |
| 中等持続型 | 毎日 | 月1回以上日常生活や睡眠が妨げられる | 週1回以上 | 60%以上 80%未満 |
30%超える |
| 重症持続型 | 毎日 | 日常生活に制限 | しばしば | 60%未満 | 30%超える |
■参考参照サイト:あなたの喘息はいい状態にありますか?|制作物|調査研究|ぜん息などの情報館|大気環境・ぜん息などの情報館|独立行政法人環境再生保全機構
気管支喘息の発作強度と判定
発作強度で最も重篤なのは、呼吸困難が見られてチアノーゼが出ており、ピークフロー値(息を勢いよく吐き出したときに流れる息の速度)が測定不能になっている状態です。
その次が、大発作と呼ばれる「苦しくて横になれない」「会話が困難」「歩行が困難」な状態。
ピークフロー値は普段の半分以下、もしくはほとんど測れなくなります。
3段階目の中発作は、会話や歩行は可能ではあるものの困難で、苦しくて横にはなれません。
ピークフロー値は、普段の50~70%程度という状態です。
4段階目の小発作になると、会話は普通にでき、歩行もゆっくりなら支障がない状態で、苦しいものの横になることができます。
ピークフロー値も70~80%です。
最も軽度の段階では、症状は息苦しい程度のもので、横になれますし、会話や歩行も可能な状態。
ピークフロー値も80%以上を示します。
正常な状態を入れると、喘息の発作強度は6段階で判定することができ、中発作以上の場合は内科やかかりつけ医などの受診が必要です。
気管支喘息の治療
喘息は、「長期管理薬(予防薬)」「発作治療薬」という2種類の薬を使用して治療します。
気管支喘息の治療:長期管理薬(吸入ステロイドなど)
気管支喘息の患者数は増加しているものの、喘息死の数が減少しているのには、「吸入ステロイド薬」の進歩が大きく影響しています。
気管支喘息の長期管理薬:ステロイド
吸入ステロイド薬は症状の強度によって量が決められ、定期的に使用することで気管支の炎症を継続的に抑える効果が期待できるのが特徴です。
症状が治まってきたら徐々に量を減らしていくという方法が採られますが、症状が治まっても、自己判断で使用を中断してはいけません。
気管支の炎症は徐々に悪化していくので、吸入をやめてしまうとひどくなるまで気付かず、また治療のやり直しになってしまう可能性があります。
必ず、内科やかかりつけ病院の医師の指示にしたがって治療を進めましょう。
気管支喘息の長期管理薬:テオフィリン除放性内服薬
気管支平滑筋(きかんしへいかつきん)という場所に働いて、気管支を拡張します。
気管支喘息の長期管理薬:β2刺激薬
貼付薬で、交感神経に働いて気管支を拡張します。
気管支喘息の長期管理薬:抗アレルギー薬
比較的副作用が少なく、アレルギーによる発作が起きにくくなる薬です。
気管支喘息の長期管理薬:去痰薬(きょたんやく)
痰を出しやすくする内服薬です。
気管支喘息の治療:発作治療薬
喘息の発作が起きた場合には、長期管理薬ではなく「発作治療薬」を使用します。
発作治療薬はその名の通り発作を鎮めることに特化しており、長期管理薬よりも早く効果が現れる薬です。
気管支喘息の発作治療薬:吸入β刺激薬
交感神経に働くことで、気管支を拡張する薬です。
気管支喘息の発作治療薬:テオフィリン注射薬
気管支平滑筋に働いて、気管支を拡張します。
気管支喘息の発作治療薬:ステロイド薬
炎症を抑える内服薬、または、静脈注射です。
気管支喘息の発作治療薬:アドレナリン・エピネフリン
高度の発作が起きて重症のとき、気管支を拡張する皮下注射です。
気管支喘息の発作治療薬:去痰薬
炎症を抑える内服薬、または、静脈注射です。
■参考参照サイト:喘息・アレルギー外来|済生会江津総合病院
喘息で気を付けること
喘息は、常に喘息発作が出ない状態でいられるよう、体をコントロールすることが重要です。
ここでは、喘息のコントロールで気を付けることについて確認しましょう。
喘息で気を付けること:ダニやほこりなどのアレルゲン
■イラストの参考サイト:気管支ぜんそくは生活環境が原因?|総合南東北病院 広報誌健康倶楽部
気管支喘息のひとつであるアトピー型喘息は、アレルギーが原因で引き起こされるため、アレルギー検査で判明したアレルゲンは除去するようにします。
特に、ハウスダストにあたるほこりやダニは、気管支喘息のアレルゲンとなりやすいので、こまめに室内の掃除を行ないましょう。
なお、代表的なアレルゲンには以下のものがあります。
- 食べ物(卵・牛乳・小麦など)
- ダニとその死骸などのハウスダスト
- 花粉
- 動物の毛
- カビ
喘息で気を付けること:タバコの煙、排気ガス・・・
■イラストの参考サイト:気管支ぜんそくは生活環境が原因?|総合南東北病院 広報誌健康倶楽部
タバコも、喘息の状態を悪くします。
タバコの煙は気道の炎症を引き起こすため、発作の誘引になることもあるのです。
本人が禁煙するだけでなく、分煙になっている飲食店に入るようにするなど、タバコの煙を吸わないように気を付けましょう。
なお、アレルゲン以外で喘息発作を誘引するものは、以下の通りです。
喘息発作を起こさないために、覚えておいて下さいね。
- 天候や気温の変化
- 公害や排気ガス
- タバコの煙
- 化粧品
- 風邪などの感染症
気管支喘息の発作が起きたときの対処法
気管支喘息の場合は、発作症状が出たら病院に行くのが大切です。
基本は、長期管理薬(予防薬)の吸入ステロイド薬で経過を見ますが、軽度から中度程度の発作が出た場合は「長時間作用性β2刺激薬」という薬などを処方されます。
喘息は風邪とは違い、横になって休んでも苦しさは消えません。
中度以上の発作の対処法としては、テオフィリン薬、経口ステロイド薬、抗コリン薬などの発作治療薬を使った方法が中心となります。
重度の発作が見られた場合は必ず、救急外来を受診しましょう。
似た病気の咳喘息とは?
気管支喘息の症状に空咳がありますが、それに似た「咳喘息」という病気もあります。
咳喘息は慢性的に咳が続く病気で、気管支が何らかの刺激によって炎症を起こすことが原因です。
咳喘息を引き起こす原因は、温度差やタバコの煙、飲酒やストレス、あるいはほこりやダニなど、多くのものが考えられます。
アレルギーを持っている人に多いとされており、患者数は年々増加しているため、今症状が出ていないからといって油断はできません。
また、風邪と併発することが多いのも咳喘息の特徴です。
風邪が治ったにもかかわらず咳だけが持続する場合は、咳喘息を疑ってみましょう。
気管支喘息との違いは、ゼーゼーやヒューヒューといった喘鳴が見られず、呼吸困難もない点などです。
ただし、咳喘息も気管支の炎症なので、放っておくと気管支喘息に移行することも・・・。
1ヵ月以上咳が続くようなら、内科やかかりつけの病院を受診したほうが良いでしょう。
小児喘息の場合は、親が症状に気付いたり、学校などが受けさせる定期的な検診によって早期に発見されたりする可能性が高くなります。
しかし、成人してからの喘息は、重症化するまで気が付かないことも。
咳喘息ももちろんですが、風邪とは違う気管支の異常に気付いたら早めに内科やかかりつけの病院を受診して、早期発見・早期治療を心がけるようにしましょう。
■参考参照サイト:
※この記事は、2017年10月時点の情報に基づいて作成されています。
※当サイトは原則「リンクフリー」といたしております。
監修医師プロフィール
産業医 山田

略歴
- 昭和30年
- 愛知県生まれ
- 昭和54年
- 愛知医科大学卒業
名古屋大学医学部予防医学教室入局 - 昭和60年
- 名古屋市職員健康管理センター所長
名古屋市産業医 - 平成5年
- 医学博士(名古屋大学)
- 平成6年
- 愛知医科大学助教授(産業保健科学センター)
- 平成8年
- 名古屋大学医学部講師(非常勤:予防医学)
- 平成12年
- エスエル医療グループ「栄内科」院長
なごや労働衛生コンサルタント事務所長 - 平成13年
- 愛知医科大学客員教授
- 平成20年
- 日本労働安全衛生コンサルタント会愛知支部長
















