人気の病院・名医紹介Interview
整形外科治療とリハビリをさらに強化し、
地域の幅広い医療ニーズに応えたい
今回インタビューを受けて頂いたドクターは、岐阜清流病院、病院長の松本和先生です。
岐阜清流病院は、整形外科、脳神経外科、循環器内科、消化器内科、リハビリテーション科、眼科、歯科など幅広い診療科を持ち、一次救急、二次救急病院の役割を担うとともに、岐阜大学病院や岐阜市民病院などの高度医療機関での急性期治療を終えた患者も受け入れ、岐阜市と近郊の地域医療を支えています。
また、岐阜県下屈指の規模を誇る施設と80名近いリハビリスタッフが在籍するリハビリに強い病院でもあります。
病院長の松本和先生は整形外科を専門とし、特に膝疾患の診療と手術の豊富な経験を持つエキスパートです。2022年に同院の病院長に就任し、整形外科でのロボット支援手術を導入して、手術の機会と成果を高めています。「患者さんに笑顔になっていただく」ことを理念とし、自身も温かい笑顔を絶やさないドクターです。岐阜清流病院の松本和病院長に、同院のリハビリテーションへの取り組みや、地域では数少ない緩和ケアの実践について、また今後の展望を伺いました。
中学時代に器械体操部に所属していまして、ケガに悩む仲間が身近にいたことがきっかけです。なかには脊髄や首を傷めて、競技をあきらめた友人もいました。そうした経験から、ケガをした人を支えられる人間になりたいと思ったことが医師を志した出発点です。ですから、医学部を受験するときには、すでに専門は整形外科と決めていた、めずらしいケースかも知れませんね。私は、整形外科のなかでも膝疾患を専門にしています。半月板という膝関節にかかる負荷を分散させる軟骨の損傷や、膝関節を支える靱帯の損傷を対象とした手術、また変形してしまった膝関節を人工関節に置換する手術を数多く行ってきました。現在もほぼ毎日、手術を行っています。
手術支援ロボットは、私の大事な相棒です(笑)。ロボット支援手術では、切開や骨を削る位置、量を事前にシミュレーションして、より正確で安全な手術が期待できます。
また、的確に手術を行うことが患部へのダメージを抑えることにつながり、術後の早い回復が望めるのもメリットです。その精度は、まだ高められると感じていますので、率先して手術支援ロボットを活用し、改良できるところを見つけることで、技術の進化に貢献したいですね。
みなさんの顔が一人ひとり違うように、膝の関節や靱帯の状態も患者さんによって異なります。その違いを把握する感覚は、手術を重ねて身に付いていくのですが、手術支援ロボットはそうした経験の差を補う働きも期待できるため、より多くの患者さんに手術の機会を提供できると考えています。
当院は24時間365日の救急診療に対応しつつ、内科や脳外科、眼科、歯科の医師が、日常的な疾患から入院・手術が必要な患者さん、また継続的に血圧や血糖値のコントロールが必要な症状にも対応しています。また、治療後のリハビリテーションが必要な患者さんには、医師と専門スタッフのチームが寄り添い、家庭や社会への復帰を目指して取り組んでいます 。リハビリチームは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療相談員など、専門性の高いスタッフが揃っており、脳血管疾患や心臓疾患、整形外科疾患からの回復をサポートしています。治療やリハビリが一段落して、家で生活できるようになっても、引き続き、見守りが必要な方は、地域のクリニックにお願いして経過を診て頂くケースもありますので、そうした地域の医療機関との連携を大切にしていきたいですね。
緩和ケアへの取り組みは、当院の前身であった病院が1995年に岐阜県で初めて開設したホスピス病棟が始まりです。悪性腫瘍(がん)などの患者さんで、積極的な治療が難しい場合、あるいはご本人がそれを希望されないときに、残された時間を可能な限り、穏やかに過ごしていただけるように支えています。
緩和ケア病棟は、身体の痛みをコントロールするだけでなく、心の苦痛や、ご家族の不安もやわらげるために、医師をはじめ様々な専門職がかかわっている病棟です。緩和ケアを希望される方に、心静かに生活して頂きたいと考えて、室内を落ち着いた木目調で統一し、畳のスペースを設けました。この病棟で、患者さんとご家族に、できるだけ安心して過ごして頂き、その人らしく旅立てるようにサポートしていきたいと考えています。
私たちは治療をするだけでなく、その成果を論文にしたり、学会で発表したりして、院外の医師や医療スタッフと意見交換をすることも大切です。そうすることで、自分たちの取り組みが本当に良いものかどうか、また、さらに向上できるところがあるのかを確かめることができます。ですから、当院の医師やスタッフには「積極的に情報発信しましょう」と言っているんです。全国の医療従事者と交流して、自分たちの医療がどういう地点にあるのかを見つめ直し、また、経験を共有して、技術やサービスを高め合っていきたいですね。そうした変化を積み重ねて、地域のみなさんにとって身近な病院であり続けながら、日本のなかでも特色ある取り組みをしている病院として注目して頂ける存在に成長したいと考えています。
治療で症状が改善した患者さんの嬉しそうな顔を見ると整形外科医師として幸せを感じます。また、ある患者さんは、悩んだ末に、両足に義足を付けることになるのを受け入れて下さいました。その方が、義足を使って歩けるようになったときの笑顔は忘れられません。こうした経験をするたびに、整形外科は患者さんの生活の質にダイレクトにかかわる診療科なのだと、改めて感じます。一人ひとりの患者さんが、どのような働き方や暮らし方を理想としているのかを知り、その理想に近づけるように力添えをしていきたいと思っています。
2023年は透析病床を増床し、リハビリテーションの専門スタッフを増員しました。地域の高齢化に伴い、透析治療やリハビリの必要な方が増えていますので、そのニーズに応えていきたいですね。また、透析治療が必要な方のなかには体調を崩しがちな方もおられますので、入院施設を備えており、透析治療も受けられるという当院の特色を強化して、安心して透析治療を続けて頂きたいと考えています。そして、私は整形外科が専門ですから、整形外科を岐阜清流病院の得意分野にしていきたいです。医師やスタッフと共に、手術やリハビリの経験を積んで、整形外科と言えば岐阜清流病院と言われる病院を目指したいと思っています。
病院名・役職はインタビュー当時のものです。
インタビュー:2023年1月27日
1994年 |
岐阜大学医学部卒業 |
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1994年 |
国立国際医療センター 整形外科 |
1997年 |
都立墨東病院 救命センター |
1997年 |
岩井整形外科内科病院 整形外科 |
2000年 |
岐阜大学医学部附属病院 |
2004年 |
医学博士取得 |
2004年 |
松波総合病院 整形外科部長 |
2006年 |
Sanford/Burnham Medical Research Institute 留学 |
2010年 |
岐阜大学医学部整形外科 |
2015年 |
岐阜大学医学部整形外科 准教授 |
2022年 |
岐阜清流病院 病院長 |